新谷仁美直撃<3>代表入りで満足していたら世界で戦えない
新谷仁美(東京五輪 女子長距離代表候補、32歳)
夢多き高校時代、ある大会をテレビで観戦し、アフリカ選手の厳しい現実を知った。そのときのことを今でも忘れないという。
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―――高校生の時に見た、あるレースに衝撃を受けたそうですね。
「2005年の世界ユース(モロッコ)に出場したときです。男子3000メートルで、ケニアかエチオピアだったか、国は覚えていませんが、アフリカの選手が裸足でした。なんで裸足で走っているんだろうと不思議でした。裸足の選手は決勝に進みました。すると、今度は新品のシューズを履いて出てきたのです。『アフリカでは、日本みたいにシューズやウエアを当たり前のようにもらえない。あの選手はシューズを買うお金がなかったと思う。決勝に進んだことで、ようやくスポンサーからシューズを提供されたんだ』と、先生に聞かされました」
――青学大OBで箱根駅伝では「山の神」と呼ばれた神野大地選手にケニア合宿の話を聞いたことがあります。みんな「何年履いているの?」というぐらいボロボロのシューズで走っている。彼は2カ月で10足の靴をつぶしたそうですが、ケニアではシューズの裏が削れているぐらいで捨てるなんて考えられない。ケニア選手は喜んでもらっていたと。
「今はその現実がよくわかります。日本選手は予選からきれいなシューズを履いていて、決勝に出れば万々歳です。あのときのアフリカ選手の胸の内はわかりませんが、決勝はシューズを履いて走りたいと思っていたはずです。単純に『決勝へ行きたい』ということだけでなかったことが伝わってきて、今でもよく覚えています」