野村監督の冷徹な計算 シーズン半ばで主力選手を休ませた
プロ野球のペナント争いも終盤に差し掛かった。
クライマックスシリーズがないセ・リーグは巨人が独走しており、優勝、日本シリーズ進出は確実だろう。そして下位チームは来季を考えて若手を使い始めている。
来季を見据えるといえば、最も露骨だったのがヤクルト時代の野村克也監督(2020年没、享年84)だ。野村ヤクルトでコーチを務めていた人から、こんな話を聞いた。
「1994年のオールスター休みの練習時、野村監督がコーチを集めてこう言ったのです。『これから主力選手で故障や体調に不安のある者は休ませろ』と」
そのコーチは「今年は優勝を諦めた。勝負は来年だ」という意味だと理解したという。なぜなら球宴前、野村監督が「優勝は無理」とも受け取れる発言をしていたからだ。マスコミなどから「ファンに失礼。選手も敏感に反応する」と批判されたが、本人はどこ吹く風だったようだ。
当時を振り返ると、球宴前の時点でヤクルトは首位巨人と8.5ゲーム差の2位。逆転は不可能ではない。プロ野球ではもっと大差のゲーム差をひっくり返した例もある。しかも、ヤクルトはシーズン前半、巨人とは8勝8敗の五分の戦いをしていたのだ(後半は3勝7敗)。