リードに悩む阿部慎之助は「サインイップスになります」
どんなにベテラン、大物になっても、捕手のリードには傾向、クセが出るものだ。中日の谷繁元信にもあったし、巨人の阿部慎之助もしかりだった。2011年オフに巨人のバッテリーコーチとなった私は、こう聞いたことがある。
「リードってめちゃくちゃ迷わない? 慎之助はどう?」
いつも自信に満ちあふれている慎之助は、こう答えた。
「秦さん、『サインを出すイップス』になりますよ。何を出したらいいのか分からなくて、最後は出せなくなったことがありますから」
リードは本当に難しい。出すタイミングやリズム、球種、高低、コース……。なおかつ相手打者や走者との駆け引きという重要な作業もある。
これをわずか数秒の間に、無限大の選択肢の中から何を選ぶのか。「抑えたものが正解」なのだ。
「慎之助な、サインもそうだけど、周囲の期待も大きいし、勝たないといけない重圧もあるだろう。マスコミにはああだ、こうだと言われるし、ストレスもたまるだろう。これからは協力するから、困った時は何でも言ってくれ」