田中“楽天1年限定”説がはらむ危険 メジャー再復帰は絶望的
石井一久GM兼監督がラブコール
田中争奪戦から撤退する球団が相次いだところにもってきて、18日、楽天の石井一久GM兼監督(47)が、「日本でプレーする意思があるときは、楽天が声をかけない理由はひとつもない。ぜひとも仙台で、東北でプレーして欲しいなと思います」とラブコール。秋波を送ったことが「1年限定復帰」説に拍車をかけた。
メジャーでプレーしたくても、本人の希望に沿う球団が出てこない。ならば、今年だけ古巣でプレーして、来オフ、メジャーに復帰すればいいじゃないかというプランだ。
■ボールやマウンドに苦労
この1年限定の楽天復帰プラン、本人の意思に沿うようにみえて、実はそうではない。たかが1年でも、日本球界でプレーした後、再びメジャーに戻るのはいばらの道だからだ。
日米両球界の環境の差異は、特に投手に対して想像以上の負荷をかけるという。具体的にはボールやマウンドの質、登板間隔が著しく異なる。
例えばメジャー公認球は、日本の統一球と比べて若干大きく、重く、表面がサラサラして滑りやすい。「滑りやすいためにボールが高めに抜けるようになる。ブルペンで問題なくなっても、実戦に入ると違う。低めに投げようと無意識のうちに指先に力が入り、やがて前腕の筋肉が炎症を起こした」とは両方のボールを扱った投手。田中や大谷翔平、藤川球児が渡米1年目の前半戦で肘の靱帯を痛めたのは、そういったボールの質の違いによるところが大きいという。
さらにメジャーのマウンドは日本と比べて硬い。井川慶がヤンキース入団後、さっぱり勝てなくなったのは硬いマウンドが影響して思うようなチェンジアップが投げられなかったためだといわれる。
田中にとって日本球界は勝手知ったる場所。ボールやマウンドは8年前と一緒でも、その投球スタイルはすでにメジャー仕様なのだ。高校、社会人と日本で投げた後、10年強メジャーでプレーした田沢純一(34)は日本(ルートインBCリーグ)に戻ってきてボールや軟らかいマウンドに慣れるのに苦労したという。田中が楽天に戻ってきたとしても同じように苦しむのは想像に難くない。
登板間隔も日米で異なる。日本は中6日、1週間に1回投げればよいが、メジャーは中4日。おのずと調整も変わる。
田中がメジャーに挑戦したのは26歳になるシーズンだった。環境の変化に対応できるだけの若さがあったものの、すでに32歳。メジャー1年目に部分断裂した右肘の靱帯は、いまも断裂したまま。肘に故障を抱えた状態で日本のボールやマウンド、登板間隔に適応し、慣れたころに再び硬いマウンドや滑るボールを扱わなければならないのだ。
しかも、来年のFA市場は先発が豊作だ。
カーショー(32=ドジャース)、バーランダー、グリンキー(いずれも37=アストロズ)らベテランのサイ・ヤング賞投手に加え、シンダーガード(28=メッツ)、ロドリゲス(27=レッドソックス)らエース級が続々と市場に出る。今年11月で33歳になる田中は、ただでさえ大きなハンディを背負うことになる。メジャー復帰はいよいよ厳しくなると言わざるを得ない。