経済損失200億円!プロ野球キャンプ無観客で悲鳴飛び交う
大打撃は避けられそうにない。
2月1日から沖縄、宮崎を中心に行われるプロ野球キャンプが当面、コロナ禍により無観客で開催される。
両県独自の緊急事態宣言は2月7日までだが、感染状況によっては期間が延長される可能性もある。宣言が解除され、有観客に移行したとしても、選手や関係者の外食禁止など、グラウンド外の行動は大幅に制限されるし、キャンプ地を訪れるファンは間違いなく減る。
厳戒キャンプを間近に控える中、キャンプ地ではすでに悲鳴が上がっている。
■問い合わせはゼロ
キャンプ地にとって2月は、まさに書き入れ時だ。沖縄の繁華街・松山の人気焼き肉店の店主は「2月は一年で最も売り上げがある。月平均で他の月より4割ほど多いです」と明かした上で、こう続ける。
「例年ですと、この時期に選手や関係者の方々から事前に予約をいただくこともありますが、今のところ(20日時点)、一切の問い合わせがない状況です。緊急事態宣言でただでさえ客足が鈍っている中で、観光客はもちろん、選手の外食も禁止されれば、ダメージはかなり大きい」
清原は2晩で130万円
実際、選手はキャンプ中にケタ違いの大金を使う。夕方には練習が終わるため、夜な夜な繁華街に繰り出すのだ。
巨人時代の清原和博は、宮崎のキャバクラで2晩で130万円ものカネを使った。浴びるように酒を飲んで莫大なカネをキャンプ地に落としていた清原は特別としても、チームによってはほとんどの選手が毎晩のように外食する。選手が3人1組で焼き肉を食べれば、店によっては5万円はくだらない。最近の選手は昔ほど遊ばなくなったといわれるが、練習休日前夜ともなれば、キャバクラのVIPルームは選手で埋まる。選手、関係者8人程度で那覇の高級キャバクラで2時間遊べば、シャンパンなどのボトルを入れずとも支払いは軽く20万円。デリヘルやソープなどでフーゾク遊びをするのもいる。
下戸の選手や関係者は暇つぶしでパチンコを打つことも。「5万円突っ込んで負けた」なんてボヤキが球場で飛び交うのは日常茶飯事だ。
パ球団のベテラン選手は「後輩たちに食事をおごったり、選手同士の決起集会で多めに出したりするので、1カ月で200万円ほど使ったこともある」と言う。
一軍の監督もかなり散財する。セ球団のフロント関係者は「球団によってはキャンプ中に監督交際費を使い切るケースもある。コーチや裏方を慰労するための飲食代やゴルフ代、報道陣との食事会の費用などを含めると、300万円以上使う人もいるようです」と明かす。
選手、球団関係者に限らず、取材に訪れるOBや評論家、メディア、そしてファンもキャンプ地にカネを落とす。キャンプは年に一度。行きつけの店をハシゴし、普段以上にカネを使うことになる。メディア関係者が1カ月間、キャンプ地にいれば交通費、宿泊代、食事代、遊興費を合わせて50万円以上かかる。
■選手、関係者は外食禁止
昨年の沖縄のプロ野球キャンプの観客数は延べ約35万人。経済効果は121億6800万円(りゅうぎん総合研究所による)にのぼる。新型コロナが発生する以前の2019年は過去最高の141億3100万円だった。
宮崎はプロ野球以外の競技を含めると124億4400万円で、最高は16年の144億6700万円だった。コロナ禍がなければ、今年は第5回WBCが開催される予定だった。日本代表が集結する恒例の宮崎合宿が行われていれば、さらなる経済効果が期待できたはずだ。
しかし、コロナ禍に見舞われる今年は、経済効果の大半が失われる見通しだ。
「キャンプ地にとっては、大きなマイナス効果となるでしょう。仮にキャンプが全期間、無観客開催となり、選手、関係者は外食禁止、報道陣の行動も大幅に制限されるとなると、沖縄と宮崎でそれぞれ100億円ずつ、計200億円規模の損失が出ると考えられます。経済効果を期待していたキャンプ地の方々は気の毒というしかありません」
と、関大名誉教授の宮本勝浩氏(理論経済学)はこう続ける。
「ファンのケースですと、宿泊代や宿泊に伴う交通費や飲食代を使うだけでなく、グッズもいつも以上に買うことが予想されます。昨秋のシーズン終了時から時間が空き、野球に飢えているだけでなく、お目当ての選手の背番号が変われば、レプリカユニホームやタオルなどを買う。友人のためのお土産も買うでしょう。そうした消費がなくなるわけです。そのうえ選手や関係者はおそらく外食禁止となるでしょうから、その損失も大きい」
宮本氏はさらにこんな指摘をする。
「プロ野球はキャンプ、オープン戦と公式戦が連動している。キャンプで盛り上がりに欠けてしまうと、公式戦の客足に影響しかねません。まして今季も観客の入場制限が設けられる可能性もある。プロ野球全体にマイナス影響が及ばないかとの懸念もあります」
コロナが奪うものは、とてつもなく大きい。