大坂なおみハードで敵なし「4大大会制覇&五輪金」に現実味
「今回の結果はシーズンまでのオフから目指していたもの。実際に目標を達成して体が震えた」
2年ぶり2度目となる全豪オープン優勝から一夜明けた21日、記念撮影に応じた大坂なおみ(23=世界ランク2位)はこう言った。
■ハードで敵なし
前哨戦の試合前棄権が2度あるものの、今回の全豪優勝で昨年8月の全米オープン前哨戦から21連勝。2018年以降の4大大会のうちハードコートの全米と全豪に限れば、7大会中4大会を大坂が制している。ハードコートで敵なしの事実は全豪の数字にも表れている。第2サーブの得点率62%、リターン成功率75%はダントツの数字。特にリターンはオフに徹底的に練習した成果だ。
ここまでハードコートで強いと、クレー(赤土)の全仏(5月23日~6月6日)と、芝の全英(6月28日~7月11日)も期待したくなるが、実際問題としてどうか。
■赤土や芝も克服
「過去の全仏や全英の戦いぶりを見ても、特に苦手にしているという印象はありません。全仏の赤土も全英の芝も克服できると思う」と、スポーツライターの武田薫氏がこう言う。
「クレーコートは打球のスピードが落ち、ラリーが続くのが特徴ですが、全仏のクレーは他のクレーコートと比べてボールが弾む。つまり大坂の売りであるパワーが消されにくいのです。それに大坂は今回、打ち合いを制しています。ショットが正確で、ラリーに持ち込んでも負けなかった。赤土は足元が滑りやすいですけど、大坂は問題にしません」
全英の芝もクリアできるという。
「ウィンブルドンはボールが滑る、弾道が低くなるのが特徴ですけど、180センチの大坂のサーブはハードやクレー以上に角度がつく。むしろプラスです。これはどの選手にも言えることですけど、苦心するとすればサーフェスへの対応でしょう。これまではクレーの全仏を戦った2週間後に芝の全英でプレーしなければならなかった。サーフェスの変化に対応できない選手が多かったが、今年から全仏と全英の間隔が3週間に延びたのは大坂にとっても大きいと思う」
大坂が全米を制した18年以降の4大大会12試合のうち、最多は大坂の4勝、これに続くのはハレプ(29=ルーマニア)の2勝、あとは6選手が1勝ずつ。バーティ(24=オーストラリア)が制した19年の全仏以来、昨年の全仏までの6大会はすべて優勝者が異なる。つまり、いまの女子テニス界には芝やクレーで飛び抜けて強い選手がいないこともプラス材料ではある。
コロナ禍もプラス
折からのコロナ禍も大坂には追い風になりそうだ。
テニス界はコロナの影響で、すでに、いくつかの大会の中止や延期が決定。具体的な日程が決まっている大きな試合は五輪と4大大会に加えて、4大大会に次ぐ格付けのマイアミオープン(3月)など。大坂はこの試合から出場予定で、WTA(女子テニス協会)は全英以降のスケジュールを発表していない。大坂はつまり、目標を絞ってスケジュールを組めるのだ。前出の武田氏の話。
「とにかく試合を重ねることで調子を上げていく選手もいますが、大坂はそうじゃない。昨年の全米、今回の全豪の前哨戦をトーナメントの途中で棄権したように、照準をあくまでもグランドスラムに合わせている。コロナ禍で試合が制限される分、大坂陣営にとってはポイントを絞りやすいのです。女子選手の中にはジュニア時代からプレー、ツアーの過密日程に振り回されて心身ともに燃え尽きてしまう選手が多い。17年の全仏を制してその後、精彩を欠いているオスタペンコ(23=ラトビア)がその典型ですが、大坂にはその心配がない。ビーナス、セリーナのウィリアムズ家の方針を参考にジュニアの大会に出なかったのはそんな背景もあるのです」
五輪と、その年の4大大会をすべて制することを「年間ゴールデンスラム」という。男子も含めて達成したのは1988年のシュテフィ・グラフひとり。東京五輪は得意のハードコートだし、大坂が彼女に続く史上2人目の快挙を達成する可能性もありそうだ。