落合博満さんが「ここは打つ」と言うときは必ず結果を出す
そして、落合さんは言葉通り、涼しい顔をして本塁打を放って見せた。
■ここぞの集中力にため息
私は2年目以降も何度か同じ場面を目にした。落合さんが「打ってくる」と言って打席に向かうと、必ずと言っていいほど本塁打や適時打を打った。言葉に発することで自分自身にスイッチを入れていたのか。ここぞというときの集中力に思わずため息が出たほどだ。
落合さんと私は同じ内野手でロッカーが近かったが、先輩選手に入団間もない無名選手の私が声をかけづらい雰囲気があった。
当時は上下関係が今以上に厳しく、ロッカールームの雰囲気はいつもピリピリしていた。有藤道世さん、村田兆治さんといったスター選手には独特のオーラがあった。私は試合前、ロッカーを避けるように、トレーニングルームに籠もることが少なくなかった。
プロ3年目に初めて規定打席に到達。25盗塁を決めた一方で、盗塁死は13個も記録した。ある試合で2度、盗塁を失敗したことがあった。ベンチにトボトボと引き揚げるや、「2つもアウトになりやがって。おまえはもう走るな!」と、先輩から厳しい言葉をかけられたこともある。