落合博満さんが「ここは打つ」と言うときは必ず結果を出す
ロッテでの現役時代は多くの先輩や後輩とプレーし、さまざまな指導者にお世話になった。偉大な先輩として影響を受けた一人が落合博満さん(元中日監督など)である。
落合さんとはプロ1年目の1982年から5年間、ロッテで一緒にプレーさせてもらった。私の6歳年上で、プロ入りは3年先輩にあたる。82年に史上最年少で三冠王を獲得した落合さんの凄さは、入団1年目の終盤、一軍に昇格してすぐに実感した。
82年シーズンのある試合のことだった。チャンスの場面でこの年、3番を打つことが多かった落合さんに打席が回ってきた。落合さんは打席へ向かう際、バットを片手に「ここは打ってくるから」と首脳陣にポツリと言って、ベンチを出た。話しかけた相手は、私のスイッチヒッターとしての礎をつくってくれた打撃コーチ、高畠導宏さんだったと思う。
私は首脳陣のやりとりを聞くことが勉強になると思っていたので、山本一義監督ら首脳陣が集まる真横に座った。当時の川崎球場のベンチは足元にバットを置くようなスペースがなく、首脳陣がいる左隅に据え付けられた棚を使った。バッターは首脳陣のすぐそばを通ってから打席に向かう。だからこそ私は、落合さんが漏らした一言が聞こえたわけだ。