落合さんを意識しないため相手ベンチを見ないことを心掛けた
中日との2010年日本シリーズに臨むにあたり、私は相手ベンチの様子をなるべく目で見ないことを心掛けた。「落合監督」を意識しすぎないためだった。
敵将の落合博満さんが試合中、どんな局面であっても表情を変えないことは、テレビ中継などを通じて知っていた。
野球を熟知している上に、監督としての経験値も全然違う。しかも、何を仕掛けてくるかわからない雰囲気があった。ベンチの私が座る位置からは落合さんの表情をうかがうことはできないが、攻撃面や投手の継投など、「この場面で落合さんはどう動いてくるのだろう……」などと気にしすぎて、自分たちのやるべき野球ができなくなってしまうことだけは避けたかった。
中日はその年のチーム防御率がセ・リーグ断トツの3・29。投手を含めた守りのチームだ。一方の我がロッテはチーム打率、得点ともにリーグトップで打線が中心。点を取れる時に取っておかないと、勝つことは難しくなる。常に主導権を握り、流れを相手に行かせないことを心掛けた。
結果的にロッテは4勝2敗1分けで日本一を達成することができた。選手が力をいかんなく発揮してくれた。勝敗のポイントを挙げるとすればいくつかあるが、3勝2敗で王手をかけて臨んだナゴヤドームでの第6戦を延長十五回で引き分けたことは、ひとつのターニングポイントとなったと思う。