山内一弘さんから私服のまま40分間“熱血打撃指導”を受けた
「ニシ、山内さんのとこへ行こう」
入団2年目。1983年の春のことだった。オープン戦で各地を転戦する中、先輩の落合博満さんから声をかけられた。山内さんとは、数年前までロッテの監督だった山内一弘さんのことだ。
山内さんは現役時代に「シュート打ちの名人」と言われ、2000安打を達成。数々のタイトルを獲得していた。打撃指導に定評があることは知っていたが、山内さんと入れ替わる形で入団したので面識はなかった。
私はその前年の秋季練習で山本一義監督からスイッチヒッターへの転向を命じられていた。プロ1年目の一軍出場は6試合。代走と守備固めで打席には一度も立たせてもらえなかった。オフから左打ちの練習にも取り組む中、山内さんの下でプレーし、その打撃理論を知る落合さんが助け舟を出してくれたのだった。
山内さんがどんな指導をするのか、詳しいことはわからなかったが、後楽園球場での日本ハム戦のデーゲーム前の朝、落合さんに連れられ、球場近くの山内さんの自宅に向かった。