伝説の10.19ダブルヘッダー 近鉄V阻止「最後の5秒」の記憶
結果的に1敗1分けで、近鉄の優勝を阻止したこの日、私は2試合ともに「1番・二塁」でフル出場した。特に鮮明に覚えているのは第2試合。4対4の同点で迎えた延長十回表、1死一塁の場面で、打者・羽田耕一さんの二塁ゴロをさばき併殺を完成したシーンだ。
■「私の頭の中ではいろんなことが駆け巡る」
試合はすでに、4時間を超えていた。この十回で試合が終わる。私はゴロを捕ってそのまま二塁ベースを踏み、一塁へ送球。ロッテの負けがなくなったと同時に、近鉄の優勝が消滅した。
このワンプレーは、時間にすれば羽田さんが打ってから5秒ほどの出来事にすぎない。2試合計7時間33分という時間の中で、ほんの一瞬の出来事だったけれど、私の頭の中ではいろんなことが駆け巡った。
「絶対にエラーをしてはいけない」
「打球は二塁キャンバス寄りだ。これならゲッツーが取れるな」
そして打球を捕ってそのまま二塁を踏み、一塁へ送球する瞬間、「近鉄の優勝がなくなるな」と思った。