結果を残し続けた秘密は宿舎の机の上に積まれた有藤ノート
プロ3年目(1984年)の秋季キャンプ。私は、有藤通世さんとまさかの同部屋になった。
「失礼します!」
有藤さんが部屋にいたらと思い、コンコンとドアをノックして、恐る恐る部屋に入った。
「何で自分の部屋をノックしてんだよ」
荷物を整理していた有藤さんは、あっけにとられたようにこう言った。
今の時代なら、大ベテランには個室が与えられ、若手と相部屋になるなど考えられない。しかし、当時は宿舎も高級ホテルではなかったし、他球団でもそうしたケースはあったようだ。
仕方ないと腹をくくって迎えた秋季キャンプ初日、夜間練習を終え、クタクタになって部屋に戻ると、有藤さんがベッドの上でうつぶせになりながら、ノートに何やら熱心に書き込んでいた。
有藤さんはキャンプ地に数冊のノートを持ち込み、机の上に積んでいた。野球のことを書いているようだった。手垢が目立つ表紙が歴史を感じさせた。毎日のようにメモを取る姿を見た。その日その日で学んだこと、感じたことをノートに書き込むことがルーティンになっているようだった。