伝説の10.19ダブルヘッダー 近鉄V阻止「最後の5秒」の記憶
普段以上に、集中力が研ぎ澄まされていたのだろう。
その試合の八回には、首位打者のタイトルがかかっていた高沢秀昭さんが、左腕の阿波野秀幸から“起死回生”の同点本塁打を放った。ストライクゾーンに入ったスクリューを逃さず、左翼席へ叩きこんだ。
近鉄は第1試合から、1点を取るたびに選手やコーチがベンチ前に出てきて大喜びしていた。優勝がかかっているのだから、当然そうなるだろうなと思う半面、そういう姿を見せられ続けると、絶対に負けてなるものか、という思いが強くなっていったことも確かだ。
そうした中、第2試合の九回裏に、有藤監督による9分間の抗議が起きたのである。(つづく)