大坂なおみ引退の可能性も…26歳でツアー去ったボルグの例
「積もりに積もったものが爆発したのでしょう」
テニスの全仏オープンで記者会見を拒否し、棄権した大坂なおみについて、テニスに関する著書もあるスポーツ心理学者の児玉光雄氏は、こうみている。
【写真】この記事の関連写真を見る(15枚)
大坂は公言通り、先月30日に行われた1回戦の後の会見に出席せず、主催者から1万5000ドル(約165万円)の罰金を科された。「プロだから会見は行うべき」との声が多く寄せられ、このまま大会に出続けることは厳しいとの判断から、ツイッターでの棄権表明につながった。
同時に大坂は、4大大会初制覇となった2018年の全米オープン以来、「うつの状態を繰り返し苦しんできた」と、うつ病であることも告白した。
「経験豊富なトップ選手はコミュニケーションスキルが高く、ジョークを交えるなどして嫌な質問をかわすことができる。大坂さんはそれができず、過敏に反応し、ストレスになっていたはずです」(児玉氏)
「テニスの能力に心の成長が追いついていない」
一方、テニスジャーナリストの塚越亘氏は、「このまま引退」を懸念する。
「大坂は4大大会で4勝していますが、メンタルが強い選手ではない。元コーチのサーシャ・バインは彼女の心理状態を読み取り、巧みな会話で能力を引き出し、18年の全米を勝たせた。サーシャと決別後はチームのサポートもあり、以前に比べればオープンな性格になったと報じられている。しかし、テニスの能力に心の成長が追いついていないというか、今も純真無垢な子供のままです。私は、全米に勝ったときからマスコミにつぶされないか心配だったのです」
さらに塚越氏は続ける。
「今回は罰金さえ払えば嫌な記者会見は回避でき、プレーに集中できると考えていたのでしょう。ところが、自分が想像する以上に大きく取り上げられた。昨年の全米オープンは人種差別反対の意志を示す黒いマスクを着けて優勝し、世界から称賛されたのに、今回は予想外の強い逆風が吹いた。ショックだったと思います。そして、うつ病であることを明かし、棄権した。この一報を聞いたとき思い出したのがB.ボルグです。ウィンブルドン5回、全仏6回も優勝している選手が、トーナメント日程の過密さに嫌気がさし、1983年に26歳の若さで突然引退した。あのときは衝撃を受けました。大坂選手もこのまま引退しないか、心の状態を含めて、とても気になりますね」
ツイッターでは「しばらくコートを離れようと思う」とも語った大坂は現在23歳。再びコートに戻る日はくるのだろうか……。