IOCにナメられる日本人 五輪が炙り出す「NOと言えない国」

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 彼らは喉元過ぎれば何とやらとタカをくくっているのではないか。

 15日、IOC(国際オリンピック委員会)のコーツ副会長が来日。大会組織委員会などと開催に向けた最終調整にあたり、五輪閉幕まで日本に滞在する。

 コーツ副会長は日本が新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下でも、五輪開催について「答えはイエスだ。我々が示している対策を実行すれば安全安心な開催はできる」と発言して波紋を呼んだ張本人だ。

 バッハ会長も「東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない」とコメントしている。

 14日にはIOC最大のスポンサーで、総額1兆円超という巨額な放映権料を支払っている米NBCユニバーサルのジェフ・シェルCEOが、イベントでこう発言したという。

■「問題を忘れて楽しむ」

「私は(2012年のロンドン五輪のとき)ロンドンに住んでいたが、人々は交通問題に不安を抱えていたし、前回(リオ五輪)はジカ熱の問題があった。だが、開会式が始まると、すべての人々がその問題を忘れて17日間を楽しんだ。今回も同じようになる」

 何が何でも五輪を開催するというIOC幹部たちの発言はいかにも傲慢だし、NBC幹部の発言にしてもコロナ禍で深刻な日本の国民感情をないがしろにしたものだ。

 これまで散々、五輪の危険性を指摘してきたテレビや新聞などのメディアも、彼らにかみつくどころか、いまや「五輪モード」に突入。15日のテレビは早朝、来日したコーツ副会長がカメラに向かってにこやかに手を振るシーンをタレ流していた。

「要するに日本人はナメられているのですよ」と、作家の吉川潮氏がアキレ顔でこう言った。

■手のひら返しのマスコミ

「いまはコロナで大騒ぎしているが、いざ、五輪が始まればメダルだ、すごいと熱狂する。熱しやすく冷めやすい日本人の特性を知っているからこそ、彼らは言いたい放題なのではないか。コロナ禍は命にかかわる問題です。米テレビ局幹部の発言はもちろん聞き捨てならないし、冗談じゃないと思う一方で、悔しいかな、実際問題、彼の言う通りになる気がして仕方がない。現に世論をリードするマスコミが顕著じゃないですか。五輪中止を訴えてきたのが、手のひら返しで五輪を迎える論調に変わりつつある。五輪が始まればテレビはメダルを獲得した選手の家族をインタビューしてよくやったと騒ぐでしょうし、新聞の1面のコロナの感染者数はメダルの獲得数に変わるんじゃないでしょうか」

 いや、ナメられ、ばかにされているのは日本政府や五輪組織委員会も一緒だ。

「言いなりにならず、もっと要求していい」

 発売中の月刊「文芸春秋」がバッハ会長を「ぼったくり男爵」と表現したワシントン・ポスト紙のコラムニストであるサリー・ジェンキンス氏の記事を掲載。「IOC貴族に日本は搾取されている」と題した原稿の中で、氏は「日本政府がIOC側にプレッシャーをかければいい」「譲歩を求めてもまったくおかしくありません」と言及。

「特に医療コストの負担はIOCに求めていいと思います。ハイジャック犯たちに、『東京五輪では、他国から入国する五輪関係者の治療に対する責任を負わない』と主張する権利があると思います。医療責任を負うべきは、東京ではなく、バッハ氏やコーツ氏なのです」「日本は言いなりにならず、もっと要求していいのです」と指摘している。

 まったくだ。米紙コラムニストのビリー・デービス氏も、「コロナ禍で我々、一般家庭がそれなりの金額の給付金を手にしているとき、日本では安倍前首相がマスクを配って悦に入っていた。アメリカでそんなことをしたら暴動が起きるなって友人と笑ってたんです。オリンピック、野球サッカーなどの国際大会になると異常なほど興奮して大騒ぎするくせに、肝心なときにノーと言えない、おかしなことをおかしいと言えない不思議な人たちだとね」と話す。

 東京五輪は図らずも日本人の特性をあぶり出すことになりそうだ。

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