侍Jは五輪金メダルで当然の戦力 唯一の死角は稲葉監督の“頭デッカチ”
「戦力自体は日本が抜けていますよ」
スポーツライターの友成那智氏がこう言った。
日本時間27日に行われた野球の東京五輪最終予選でドミニカ共和国がベネズエラに8-5で逆転勝ち、最後のキップを勝ち取ったことにより日本、メキシコ、米国、韓国、イスラエルを含めた出場6チームがすべて出揃った。スポーツマスコミによれば、稲葉監督は7月28日の開幕戦で対戦するドミニカ共和国を警戒しているそうだが、友成氏は「戦力は日本がダントツ」とこう続ける。
「ドミニカには元ヤンキースのメルキー・カブレラ外野手、元ブレーブスでメジャー通算166盗塁のボニファシオ内野手(いずれも36)らネームバリューのある元メジャーリーガーがいますけど、いずれもメジャーには契約するチームがなく、すでに終わった選手。米国やメキシコやイスラエルにしても野手は同様です。投手には2Aや3Aの若手がいますけど、今後ローテーションの4、5番手で使えそうな有望株は、まず、メジャー球団が出しません。特に先発の若手有望株に関しては、五輪に出してケガでもされたらかなわないとプロテクトする傾向が強い。WBCと違って、メジャーはシーズン中に行われる五輪に対して冷ややかですから」
■7月中旬から合宿できる“特権”が
2019年のプレミア12の決勝で日本が対戦した韓国にしても、「ブルージェイズの柳賢振、カージナルスの金廣鉉らトップクラスの投手はメジャーでプレーしていますし、代表は若返りの時期にある」(友成氏)というのだ。
戦力が抜けているうえに、地の利もある。メキシコのように日本で合宿する国もあるが、彼らは来日してすぐに練習ができるわけではない。国によって差はあるにせよ、隔離期間があるからだ。7月中旬から仙台でみっちり合宿を行える日本には開催国特権があるようなものだ。
融通の利かない選手起用が短期決戦でアダに
ただ、日本代表に死角があるとすれば、首脳陣ではないか。
日刊ゲンダイも指摘しているように、16日に発表された24人の代表メンバーは必ずしも状態のよい選手ばかりではない。
すでに故障で出場を辞退した中川(巨人)と会沢(広島)をはじめ、メンバー入りした菅野(巨人)も登録を抹消されている。エースとして期待される田中(楽天)にしても3勝4敗、防御率3.18と、全盛時とはほど遠い。
むしろ状態のよくない選手が目立つ一方で、リーグ単独トップの8勝を挙げている宮城(オリックス)やリーグ3位タイの6勝(3敗)、同2位の防御率2.33と好投を続ける柳(中日)はメンバーに入っていない(数字はいずれも28日現在)。
それでも前出の友成氏が言うように「日本の戦力は抜けている」のだが、
「問題は状態より実績を重視する稲葉監督の選手起用です」と、マスコミ関係者がこう言う。
「顕著なのが19年のプレミア12ですよ。その年に15勝で最多勝を獲得した山口(当時巨人)をエース格に起用。直前のカナダとの強化試合で2回6失点と散々だったにもかかわらず、1次ラウンドと2次ラウンドの開幕戦、そして決勝の韓国戦に先発で使った。案の定、山口は1次ラウンドのベネズエラ戦で4回5安打1失点、2次ラウンドのオーストラリア戦で4回4安打2失点とピリッとせず、決勝の韓国戦は1回3失点でKOされています。頑固というか、融通の利かない稲葉監督の選手起用が、短期決戦でアダにならないか心配です」
「頑固」で「融通が利かない」スタンスは、本人の性格というか、人間性に起因しているのかもしれない。
猛練習で2000安打の名球会メンバーになったように、典型的な努力の人。苦労人であるがゆえに中途半端な妥協を許せないのだ。
「現役時代は若手の練習態度に見かねて声を荒らげることもしばしば。KOされ、いたたまれなくなってロッカーに引っ込もうとした投手を『ベンチに座って応援しなければダメじゃないか!』と叱り飛ばしたこともあります。言うことはいちいちもっともでも、言い方や言う場所に配慮しないから、ときとして波紋が生じる」(日本ハムOB)
金メダルが確実視される五輪野球の日本代表に唯一、不安があるとすれば稲葉監督のあまりに真っすぐで、かたくなな部分というのだ。