著者のコラム一覧
三枝成彰作曲家

1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。

オリンピック開会式は中途半端な出し物ばかり…かつてないほどつまらなかった

公開日: 更新日:

 全体として散漫で盛り上がりに欠け、身を乗り出して見たくなるものはひとつもない。中途半端な出し物ばかりを延々と見せられるのは苦痛だった。

「イマジン」は良かったが、世界の歌手に歌い継がせるのは古い。「ウィ・アー・ザ・ワールド」のパクリのようだ。

 現在はジョン・レノンとオノ・ヨーコさんの共作とされているので、辛うじて日本人に関連してはいるのだが、肝心の歌詞の翻訳が画面に出なかった。「想像してごらん、国境も宗教も所有も存在しない、貧しさも飢えも必要ない、みんな兄弟同士で世界を分かち合っているんだから」というこの曲はベトナム戦争をやめさせ、数百万の命を救った反戦歌だ。その歌詞には政治批判とも受け取れる激しさがあるから流さなかったのか。

 ラヴェルの「ボレロ」を聖火点火のシーンに使ったのも、よく分からなかった。恐らく別の楽曲を使うはずが、何かの事情で土壇場で差し替えたのではないか? どうせ使うなら、日本人の曲にしてほしかった。

 ただ、MISIAの「君が代」はアバンギャルドなハーモニーを用いた編曲が奇抜だった。「『君が代』を冒涜(ぼうとく)している」と怒った人もいるかもしれないが、芸術表現に賛否両論あるのは西洋では当たり前だ。むしろ否定が多いのを良しとする気風がある。日本人があそこまでできたのは初めてだろう。世界が注視する中で披露したのは評価できる。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…