智弁和歌山は「歓喜の輪」なし 控えめに甲子園V喜ぶ“新様式”にイチロー指導の影響を指摘する声

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 全国3603校の頂点に立った智弁和歌山のエース・中西聖輝は、最後の打者を三振に仕留めると、グラブと右拳を叩き合わせて控えめに喜びを表現。他のナインらも笑顔を浮かべ、ただちに整列へ向かった。

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 29日に行われた夏の甲子園決勝の智弁和歌山(和歌山)対智弁学園(奈良)の幕切れ直後の光景だ。

 これまで甲子園の優勝といえば、試合が終わった瞬間にメンバー全員がマウンドに駆け寄り抱き合い、拳を突き上げ、砂ぼこりを上げながら大喜びして「歓喜の輪」をつくるのが恒例だった。ところが今年の優勝校、智弁和歌山に「歓喜の輪」はなかった。その理由について宮坂厚希主将はインタビューで「相手もいますし、礼に始まって礼で終わるということで。礼が終わってから全員で喜ぼうと決めていました」と説明した。

 歴代の優勝校も壮絶な練習を乗り越えて日本一になっている。「その瞬間くらい派手に喜んでもいいじゃないか」という声もあるだろうが、SNS上には「見ていて気持ちが良い」「すぐに整列に向かってシビれた」「すごくうれしいはずなのにすごい」と、ナインを称賛する声が沸き起こっている。

「意識を変えるには十分なインパクト」

「智弁和歌山の姿勢は、日本人に受け継がれている武士道精神を揺さぶるものでした。これは今後の甲子園に受け継がれていくと思います」と、作家でスポーツファンの吉川潮氏はこう続ける。

「相手に敬意を払って、喜びをグッと抑えたことは非常に素晴らしい。あの姿勢を見て『いいな』と思ってくれる球児はたくさんいるはず。意識を変えるには十分なインパクトがありました。臆測ですが、智弁和歌山の振る舞いは、昨年12月に3日間、同校を指導した元メジャーリーガーのイチローの影響があるかもしれません。イチローといえば、どれだけヒットを打ってもその場では絶対に大喜びしなかった。智弁和歌山の選手たちは同氏との触れ合いの中で、なにかを得たのだと思います」

 プロ野球界も智弁和歌山を見習ってほしいと吉川氏はさらに続ける。

「嘆かわしいことですが、プロ野球はたかがバントを成功させたぐらいでハイタッチしたり、大差で負けていても本塁打を放とうものなら、ベンチメンバーまでカメラに向かってふざけたパフォーマンスをしています。そんな情けない姿を見せられる球児たちに、良い影響はありませんから」

 今回の智弁和歌山の優勝シーンは球界に影響を与えるかもしれない。

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