著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

竜巻被害への対応で露呈した大リーグ機構の思惑…労使対立を有利に解決するための手段に?

公開日: 更新日:

 今回の竜巻は球界にも被害を与えた。

 例えば、大リーグの審判であるトリップ・ギブソンはケンタッキー州メイフィールドの自宅が大破し、同州ドーソン・スプリングスの球場、ドーソン・スプリングス・シティー・パークもフェンスが倒壊するなど大きな被害を受けている。

■支援を呼び掛けながらツイートを無視

 しかし、大リーグ機構はSNS上でギブソンの自宅の修復にかかる費用の支援や米国赤十字社への募金を呼び掛けるものの、ケンタッキー州出身のESPN司会者マイケル・イーブスがツイッター上で機構や各球団に球場の復旧支援を呼びかけても何の反応も示していない。

 大リーグ審判員組合との労使協定は2024年まで有効である。現在機構と球団経営陣は労使協定の更新を巡り選手会側と対立し、使用者側による施設封鎖が行われている。

 こうした状況を考えれば、機構はギブソンへの支援を呼びかけることで審判員組合に恩を売り、間接的に組合による機構・球団経営者側への支持や労使交渉への不介入を求めているといえる。

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