Vまであと2イニングで同点弾…直球のサインにクビ振りスクリューボールを投げた理由
私はしかし、ストレートのサインにクビを振った。スクリューボールがベストだと思ったからだ。
■本塁打だけは避けなければならない場面だったが…
何より自分が投げている球のキレとスピードに不安があった。2日前の阪急戦で128球を投げて、中1日。数時間前の1試合目もリリーフで登板していた。ストレートにいつものキレがあるとは思えなかった。
高沢さんはその年、阪急の松永浩美さんと首位打者を争っていた。高沢さんとの相性は良くなかったけれども、詰まった安打とか野手の間を抜かれた当たりもあった。1点リードの終盤、1死走者なし。本塁打だけは避けなければならない場面だ。
さほど広くない川崎球場だけに、ひとつ甘く入った場合にスタンドに運ばれる確率はスクリューボールの方が低いと思ったのだ。
スクリューボールは第1試合の九回2死満塁もそうだし、それまでピンチを何度もくぐり抜けてきた球だ。しかも高沢さんはその打席でスクリューボールを2球続けて空振りしていた。私は迷うことなく山下さんのサインにクビを振った。