大谷翔平リアル二刀流2年目で疲労の兆候が…心身のダメージと「大谷ルール」重圧のしかかる
エンゼルス・大谷翔平(27)が日本時間19日、敵地アーリントンでのレンジャーズ戦に「1番・DH」で先発登板。投げては6回を6安打2失点とまずまずだったが、勝敗は付かなかった。打っては相手の先発右腕ダニングらレ軍投手陣に5打数無安打2三振。チームは延長十回にサヨナラ負けし、今季初の3連敗となった。
大谷は前日、七回の第4打席で自打球が股関を直撃。苦悶の表情を浮かべ、打席の周辺を小走りするなど痛みを隠さなかった。マリナーズ・ハニガー外野手が自打球で睾丸が破裂して手術を受けた例もあるだけに試合後、マドン監督には大谷の状態を確認する質問が相次いだ。この日の登板について聞かれた指揮官は「あす投げるよ」と明言。「(大谷の股間は)大丈夫だ」と苦笑いを見せた。
幸いなことに大谷の急所は大事に至らなかったようだが、今季の二刀流としての働きぶりを見ると、心身へのダメージは計り知れない。
■リアル二刀流の疲労から球威の低下
大谷は投打の二刀流として、ほぼフル稼働だ。股関節痛で4月29日のガーディアンズ戦を欠場しただけで、前日までにメジャー最多タイの38試合に出場。ナ・リーグも含めれば昨年の球宴前日のホームランダービーで対決したフアン・ソト外野手(ナショナルズ)ら6人いるが、ア・リーグでは大谷だけ。しかも、この日のレンジャーズ戦も含めれば、登板日は7試合連続でリアル二刀流での出場となった。4月8日の開幕戦と同28日を除けば、登板日の前後は野手としてフル出場。前回登板した12日のレイズとの3連戦ではキャリア初の満塁弾、今季5個目の盗塁をマークしている。
「すでに疲労の兆候は見受けられます」とJスポーツのメジャーリーグ中継で解説を務める評論家の三井浩二氏がこう続ける。
「前回のレイズ戦では途中から明らかに球威がなくなり、試合序盤に最速160キロ近くをマークしながら、六回には150キロまで落ちていました。変化球の制球に苦しんだこともあり、スライダーは肘を下げてサイド気味に投げるなど苦戦しているのがうかがえました。開幕から約1カ月が経過し、二刀流による疲労が球威の低下に表れたのではないか。ただでさえ大谷は投手、野手それぞれの調整をしなければならず、他の選手の倍の練習をこなしている。マドン監督は日頃から本人と話し合ってコンディションの確認を怠らないそうですが、出場の可否を問われた大谷が『無理です』と答えるはずがありません。4月下旬には、肩肘の故障につながりかねない股関節の不調を訴えているだけに不安は尽きません」
「大谷ルール」のストレス
大谷は疲労だけでなく、リアル二刀流にかかる重圧との闘いも強いられている。
昨季、マドン監督の方針から、登板日前後に休養する制約は解除された。打席数が増え、より多くのチャンスを与えられたが、エ軍首脳陣は再び、肩や肘に重傷を負ったり、結果が伴わなければ打者に専念させる方針だった。
本人も「今年が二刀流の最後になるかもしれない」と話すなど、背水の陣で臨んだ。投打ともフルスロットルでプレーした結果の二刀流が評価され、ア・リーグMVPに選出されたが、今季は全米のファンやチーム関係者が昨季以上の活躍を期待するのは当然。二刀流のハードルはさらに高まっている。
「周囲の期待はもちろん、今季から採用された降板後もDHとして試合に出場可能な『大谷ルール』もプレッシャーになっているのではないか。これは大谷のためだけに導入された特別ルールだけに、エース級の投球と同時に特大の本塁打も期待される。降板後、DHとして打席に立てても、例えば今季2戦目のレンジャーズ戦のようにKО(3回3分の2を6安打6失点)された後に気持ちを切り替えてバットを握るのは精神的に厳しいと思う。投手としての悔しさはマウンドでしか晴らせない。周囲の期待による重圧に加え、ストレスも感じているのかもしれません」(前出の三井氏)
大谷はリアル二刀流の実質2年目を無事に乗り切れるのか。