東京五輪汚職裁判傍聴記(下)毀誉褒貶相半ばする元大会運営局次長・森泰夫被告の正体
五輪談合事件で懲役2年、執行猶予4年の判決が下された、東京五輪・パラリンピック組織委員会大会運営局元次長、森泰夫被告(56)は謎の人物である。
12日の公判は足取りはしっかりしていたものの伏し目がちで、裁判長からの問いかけに答える声は小さく、言葉少なだった。判決を受ける身だから当然といえば当然である。
法廷で胸を張り、検察官どころか傍聴席に向かっても睨みをきかせるのは、受託収賄罪を全面否認した、高橋治之被告(79)くらいだろう。
森被告は表裏がないように見えるが、謎めいているのはなぜなのか。周囲の評価があまりにも分かれているからである。
「東京五輪に欠かせない人」「有能でウソを言わないから信用できる」とマスコミに重用され、日本記者クラブで五輪開催前後に2回講演している。2019年11月、読売新聞五輪準備室長が記者クラブのホームページに以下のような感想を寄稿している。
「東京五輪・パラリンピックの前年となった今年、国内各地で本番に備えて多くの競技のテスト大会が行われた。会見の時点で、予定されている56のテストイベントのうち、既に33は終了。その各大会の現場に『必ずこの人あり』と言われるのが、東京組織委の森大会運営局次長だ」(抜粋)