五輪メダル3個 元スピードスケート高木菜那さんの「転機」先輩からかけられた言葉
妹・美帆の世界記録更新が新たなチャレンジのきっかけに
スポーツ選手が歩んでいく道は、どの道を歩めば正解なのかは誰にもわからないんです。自分の正解は自分で見つけなければいけない。
五輪での金メダルを目指して歩んでいるけど「本当にこの道で正しいのか」は、終わってみないとわからない。だから自分で選んだ練習方法を信じて進むしかない。そこにはすごく怖さがある。アスリートはみんなそうだと思います。
あのタイミングで先輩が2度にわたって言ってくれた言葉があったから怖さはありましたが、最後まで諦めずにチャレンジし続けながら、自分の道を進むことができました。
よく「金メダル獲得の瞬間がターニングポイントになったんですか」と聞かれることもあるのですが、私にとっての転機はいくつかありましたが、特に大きな瞬間はあの言葉をもらった時なんです。
もちろんソチの4年後、平昌五輪の金メダルはいろんな思いがつまった素晴らしい瞬間でした。それは先輩の言葉があったから、私はずっと戦ってこれたのかなと思います。先輩には感謝していますし、今も座右の銘です。
もう一つターニングポイントを挙げるとしたら先ほど触れた平昌で金メダルを2つ獲得した後のことです。
平昌五輪では「金メダルを取る」と明言してきたこともあり、目標を達成したことで、勝ち負けへの執着や悔しいという感情が湧かなくなっていたんです。
「この先続けていっていいのか」「伸びしろがあるのか」と思っていたのですが、妹の美帆が世界記録を出した時に、「悔しさ」を感じて。その瞬間また自分自身が速くなるために新しいことへチャレンジをする一つのきっかけになりました。
北京五輪に出場し、その後に引退を表明しました。今はチャレンジすることの大切さなど私の体験を全国でお話しさせてもらっています。夢に向かう素晴らしさを伝えたいですね。
▽高木菜那(たかぎ・なな) 1992年7月、北海道出身。2018年、平昌五輪でスピードスケート女子チームパシュートで金メダル、マススタートで金メダル獲得。22年、北京五輪でパシュート銀メダル。引退後はタレント活動や講演活動に取り組む。