著者のコラム一覧
六川亨サッカージャーナリスト

1957年、東京都板橋区出まれ。法政大卒。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年にサカダイを離れ、CALCIO2002の編集長を兼務しながら浦和レッズマガジンなど数誌を創刊。W杯、EURO、南米選手権、五輪などを精力的に取材。10年3月にフリーのサッカージャーナリストに。携帯サイト「超ワールドサッカー」でメルマガやコラムを長年執筆。主な著書に「Jリーグ・レジェンド」シリーズ、「Jリーグ・スーパーゴールズ」、「サッカー戦術ルネッサンス」、「ストライカー特別講座」(東邦出版)など。

U-23日本代表のパリ五輪最終予選に「3つの不安材料」…六川亨氏がシビアに検証

公開日: 更新日:

現予選メンバーの国際経験不足

 
 しかし、昨夏に中国で開催予定だったアジア杯(A代表が参加)が、新型コロナウイルスの影響で取りやめとなり、22年にW杯を開催したカタールが代替開催に名乗りを上げた。ただし、猛暑を避けるために24年の1月から2月の開催に変更された。このあおりを受けたのがU-23アジア杯だ。

 開催時期が4月に延期されたため、欧州各国リーグが佳境を迎える時期と重なり、「ヨーロッパでプレーしている日本人選手は(予選に)呼びにくい」(山本NTD)状況になった。

 さらに現五輪代表世代の国際舞台での経験不足も、山本NTDにとっては不安材料である。

 日本はW杯は98年大会から、五輪は96年大会から連続して出場権を獲得し、アンダー世代のU-20代表も17年と19年のW杯でベスト16に進出など結果を残してきた。 

 ところが現五輪代表世代の選手たちが、国際経験を培う格好の場所となる21年のU-20W杯インドネシア大会は、新型コロナウイルスの影響で中止となった。主軸のMF松木らが出場した23年のU-20W杯アルゼンチン大会は、1勝2敗で1次リーグ敗退となり、決勝トーナメント以降の苛烈な戦いを通して、国際的な経験値をアップさせるチャンスを逃してしまった。

 山本NTDの「(選手たちには)世界大会の経験不足がある」という指摘については「ごもっとも」と言うしかない。

 前出の荒木、松木に加えてA代表経験もあるFW細谷真大(柏)、売り出し中のFW藤尾翔太(町田)、唯一の大学生(筑波大)FW内野航太郎と多種多彩なアタッカーがそろっている攻撃陣と比べるとDF、GK陣のコマ不足も不安材料である。

「谷間の世代」というのは言い過ぎかも知れないが、Jリーグでもレギュラーとして試合に出場している選手が少ないというのは、厳然たる事実である。もちろんパリ五輪の出場権を獲得した場合だが、OA(オーバーエージ)枠にアーセナルのDF冨安健洋、ボルシアMGのDF板倉滉らの名前が、早い段階で取り沙汰されていることも、DF陣が手薄ということの証左と言える。

 中東各国の急激な底上げも見逃せない。

 日本代表は中国、UAEを撃破してライバルの韓国と1次リーグB組首位を争う展開になるだろうが、ここからシビアな戦いが待ち構えている。 B組を1位で突破した場合、準々決勝でA組2位通過予想のカタールと対戦することになり、勝ち上がっても準決勝でC組上位予想のサウジアラビアとイラク、D組上位予想のクウェートとウズベキスタンとの対戦が控えている。これまで中東サッカーは、サウジアラビアだけが突出した存在だったが、他の中東勢も国を挙げた強化に取り組み、アジアトップの日本に対し、徹底した研究で丸裸にしていることが予想される。A代表が準々決勝で敗退した1月から2月のアジア杯でイラン、イラクに敗れたことが好例だ。

 五輪代表が8大会連続出場を逃したとしても、決して不思議ではない状況に大岩ジャパンは置かれている──。

▽六川亨(ろくかわ・とおる)1957年生まれ。東京都板橋区出身。法大卒。月刊サッカーダイジェスト記者を振り出しに隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。2001年以降はCALCIO2002の編集長を務めながら多くのサッカー専門誌の創刊を手掛けた。W杯、EURO、五輪など精力的に取材。携帯サイト「超ワールドサッカー」でコラムを長年執筆中。著書に「Jリーグ・スーパーゴールズ」「サッカー戦術ルネッサンス」などがある。 

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    三浦大知に続き「いきものがかり」もチケット売れないと"告白"…有名アーティストでも厳しい現状

  2. 2

    「とんねるず」石橋貴明に“セクハラ”発覚の裏で…相方の木梨憲武からの壮絶“パワハラ”を後輩芸人が暴露

  3. 3

    サザン桑田佳祐の食道がん闘病秘話と今も語り継がれる「いとしのユウコ」伝説

  4. 4

    松嶋菜々子の“黒歴史”が石橋貴明セクハラ発覚で発掘される不憫…「完全にもらい事故」の二次被害

  5. 5

    NiziU再始動の最大戦略は「ビジュ変」…大幅バージョンアップの“逆輸入”和製K-POPで韓国ブレークなるか?

  1. 6

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  2. 7

    下半身醜聞の川﨑春花に新展開! 突然の復帰発表に《メジャー予選会出場への打算》と痛烈パンチ

  3. 8

    モー娘。「裏アカ」内紛劇でアイドルビジネスの限界露呈か…デジタルネイティブ世代を管理する難しさ

  4. 9

    伸び悩む巨人若手の尻に火をつける“劇薬”の効能…秋広優人は「停滞」、浅野翔吾は「元気なし」

  5. 10

    小松菜奈&見上愛「区別がつかない説」についに終止符!2人の違いは鼻ピアスだった