「陛下にもっと近くでご覧に入れたかった」春日野理事長の皇室への思いは遠い昔か
2020年初場所14日目、天皇ご一家は即位後初めて大相撲を観戦された。直後にコロナ禍が始まり、今のところこれが令和唯一の天覧相撲となっている。日常が戻り、今年初場所はそろそろ……と期待する日本相撲協会関係者が多かったが、実現していない。
明治初期、裸稼業として蔑視されていた大相撲の社会的地位が一変したのは、天覧相撲の始まりによるところが大きい。以来、皇室との深い関係は大相撲の存立を支えてきた。とりわけ昭和天皇の相撲通ぶりは、「ご説明役」の理事長が冷や汗をかくほどだった。
貴賓席は蔵前、両国とも2階最前列にある。蔵前時代にも両国国技館建設の際にも、相撲協会は何とか1階にと働きかけたが、警備上の問題でかなわなかった。1985年、自慢の現国技館開場にあたり、当時の春日野理事長(元横綱栃錦=円内)は残念そうに話した。
「陛下にお好きな相撲をもっと土俵の近くでご覧に入れたかった。これだけが心残りだよ」
平成の時代にも皇室との関係を示す出来事があった。