錦織圭は相性のいい8月の全米オープンを見据え、時代の急な流れとも戦っている
膝の故障の回復が遅れる34歳は今季、3月に1試合プレーしただけで、エントリーしながら棄権というもどかしい状況が続いている。
昨秋、悔いが残ることがひとつあると話していた。1年8カ月ぶりに出場した6月の下部大会で優勝。1カ月後のツアー復帰戦、アトランタの準々決勝で、それまで3戦全勝だったテイラー・フリッツ(26歳=当時世界9位)にストレートで負けた。フリッツは196センチの長身からエース7本を奪い、ファーストサーブのポイント率86%、セカンドも76%。完敗だった。錦織は無理をしたのではないかと振り返り、再び休養に入った。ブランクの重み、時代の流れ──。
個人競技のテニスに引退という言葉は馴染まない。デ杯監督も務めた往年の選手は「7回引退した」と言われ、ボルグは26歳で“引退”、2度“復帰”している。錦織は全仏も無理はしないだろう。コートだけが戦場ではない。相性のいい8月の全米を見据え、時代の流れと戦っている。晴れ姿をいつまでも待ちたい。