広島が夏場一気に巨神ベイを突き放す予感…リリーフ陣運用から見えた混沌セV争いの行方
巨人、広島、阪神、DeNA……。上位4球団が1ゲーム差にひしめく大混戦のセ・リーグ。
本紙スポーツ編集部の公式Xで、「4球団の中でどこが優勝するか」とのアンケート調査を行ったところ、昨季覇者の阪神が最多の36%、続いて巨人27%、広島21%、DeNA16%という結果となった(9日21時時点)。
勝負どころの夏場を迎え、優勝争いの行方は混沌としているが、しかし、各球団の投手の運用には明らかな違いが見られる。ここに、優勝争いのカギがあるのではないか。
■連投数、球数急増
Xの「プロ野球連投情報」によると、今季の救援投手の登板数(8日時点)は消化試合数に多少の違いはあれど、広島228、阪神228、DeNA228と横並び。巨人は250と最も多い。
一方で、投手のイニングまたぎの回数は広島がリーグ最少の11で、巨人24、阪神31、DeNA33と続く。ちなみに、最多はチーム防御率がリーグワースト3.37のヤクルトの42。回またぎが多いということは当然、リリーフ投手にしわ寄せが及んでいることになる。
ここまでの連投数に大差は見られない。トータルの2連投数は広島35、阪神39、DeNA34、巨人41。今のプロ野球は極力、救援投手の3連投を避けたり、休養日を設けるなどして負担を減らしている。指名打者制を採用していないセは、必然的に救援投手の登板機会が増える。
が、7月に入って、連投数に顕著な変化が表れた。
7月2~7日の6連戦(巨人は5試合)、4勝2敗で勝ち越した阪神の2連投数は岩崎、ゲラの2度を含む12球団最多の6。3勝3敗のタイだったDeNAも5と続いたが、広島は1勝5敗と苦戦が続いたものの、3にとどまった。
この期間の救援投手の総登板数も阪神、DeNAの21に対し、広島は18。各投手の球数は多く、阪神は岩崎の65球を筆頭に、石井63球、ゲラ52球。リリーバーにとってハードな1週間だったのがDeNAで、抑えの森原の72球をはじめ、京山、中川、ウィックの4人が55球以上を投げた。広島は森浦の51球が最多で、黒原44球、栗林40球、島内39球だった。
阪神、DeNAは勝ちを拾うため、これまでと打って変わってリリーフを惜しみなくつぎ込んだ一方で、広島は苦戦しつつも、極力ブルペンに負担をかけない選択をしたといえるだろう。
評論家の高橋善正氏がこう言う。
「広島は大瀬良、床田、森下、九里ら先発陣が安定している。長いイニングを投げるスタミナもある。先発が踏ん張っている分、リリーフの負担は小さくて済みます。阪神、巨人も先発は揃ってはいるが、広島は救援陣もリーグ屈指の粒ぞろい。抑えで22セーブ、防御率0.86をマークする栗林を筆頭に、島内、森浦、黒原、塹江、矢崎らは、それぞれ登板数は違えどほぼ防御率1点台。6勝6敗19ホールドの島内が一番悪くて防御率2.80ですからね。
前半戦終盤で誰しも疲れはありますし、今季38試合に登板し、9日の試合後に二軍再調整が決まった島内あたりは、昨季もリーグ最多の62試合に投げており、疲労はあると思いますが、全体的に連投や登板数、投手の総投球数、イニングまたぎの回数を含めて、もっとも『馬なり』できていると言っていい。
阪神は昨季の圧倒的な投手力に陰りが見えるし、巨人も頼みの綱である大勢と中川が一軍復帰を前倒しする形になり、今後に不安を残します。DeNAはこの3チームと比べて投手力は落ちるものの、攻撃力はリーグ屈指。しかし今季は投高打低が顕著で、攻撃力で押し切ることは難しい。優勝争いは投手力が決め手になるはず。その点でも投手に負担をかけない起用を続ける広島に分がありそうです」
広島の新井貴浩監督には、昨季の教訓もあるようだ。