【私と五輪】バドミントン高橋礼華「インドネシアでの1時間がなければ金メダルはなかった」

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世界最強ペアの試合が終わるまで2人きりで話を

 私たちは当時世界ランキング1位で挑んだんですが、男子ダブルスの第1シードの選手たちがベスト8で負けたのを目の当たりにして、五輪はやっぱり何が起こるか分からないなと逆に気が引き締まった。だから1試合ずつ着実にという気持ちで試合に臨んでいた。

 そう思えたのは、15年の世界選手権(インドネシア)でメダルを取れなかったことが大きなきっかけでした(マレーシアのペアに3回戦で敗退)。負けた翌日は練習を休み、観客席で当時最強だった中国ペア(田卿・趙芸蕾)の試合を見ながら話し合いました。

 2人きりでその試合が終わるまでの約1時間、「いつも勝っている相手に世界選手権だけ負けるのはなぜだろう」「結果を気にしすぎて自分たちにプレッシャーをかけ過ぎているんじゃないか」「五輪だとおそらくそのプレッシャーはもっと強くなるし、うまくいくわけがない」「自分たちのプレーを出せば絶対負けるわけがない。練習してきたことに自信を持って1年後を迎えよう」という話をしたんです。

 すると、自分たちの中ですーっと肩の荷が下りて、次の大会から先を見据え過ぎず1試合ずつプレーできるようになった。

 この中国ペアはロンドン五輪、15年世界選手権でも優勝。私が憧れる選手で、彼女たちの試合映像を見て試合に臨むのを、私のルーティンにしていました。

 2人で「ここは自分たちにも真似できるから取り入れてみよう」とか、あのときたくさん話し合えて本当に良かった。そのあと、ホテルの部屋の中でもしゃべりました。世界選手権の失敗がなかったら、2人で話し合うことがなかったら、おそらく五輪で金メダルを取ることもなかったと思います。

高橋礼華(たかはし・あやか) 1990年、奈良県出身。6歳のとき母親の影響で競技を始める。聖ウルスラ学院英智高校で松友とペアを結成。2014年に世界ランキング1位となり、16年リオ五輪で女子ダブルス金メダルを獲得。20年に現役を引退。現在はロンドン五輪銀メダリストの藤井瑞希とバドミントンアカデミーを設立し、後進の育成に邁進している。

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