「ケモノの城」誉田哲也著

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■心の底に潜む闇の奥深さに迫った問題作

ある夏の日、警視庁町田警察署に若い女性から身柄保護を求める110番通報があった。女性の足の指には爪が1枚もなく、全身にも傷ややけどの痕が見られた。女性の名前は香田麻耶、17歳。近所のマンションに閉じ込められヨシオという男とアツコという女に暴行を受けていたが、隙を見て逃げ出してきたという。マンションにヨシオの姿はなく、残っていたアツコを逮捕したが彼女もまた暴行を受けていた。

 事情聴取によって、ヨシオは麻耶の父親から金を引き出させようとアツコと麻耶に暴行を命じ死なせてしまい、死体の処理も2人にやらせていたことがわかった。これだけでも十分に陰惨な事件だが、マンションの風呂場から新たに5人分の血痕が発見され、そのうち4人が血縁関係にあることが判明したことで、事件は尋常ならざる異様なものへと変貌していく……。
 ここに描かれているのは人間とは思えぬおぞましいまでの「悪意」であり、心の底に潜む闇の奥深さである。安易な解釈や解決を寄せ付けない、重く衝撃的な事件の深層に迫った問題作。

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