目からウロコの浮世絵の楽しみ方
日本人が考えている以上に海外で評価が高いのが浮世絵。あのゴッホにも影響を与えているのだ。浮世絵を、重箱の隅をつつくような独自の視点からマニアックに読み解いた本を紹介しよう。描かれているのに見えなかった浮世絵の裏側が見えてきて、目からウロコ! 状態になる。
芥川賞受賞作家で、画家でもある赤瀬川原平氏が書いたのが「[新装版]赤瀬川原平が選ぶ広重ベスト百景」(講談社 1800円)。広重の風景画は歌麿の美人画や写楽の役者絵に比べると地味なイメージがあるが、実は広重の描き方は西洋の画家を驚かせるほど大胆でかつ斬新なのだ。定型にはまった絵を見ているときは人の目は眠っているが、目が覚めてこそ何かが見えてくる。そういう〈目の意欲〉を呼び起こすことにかけては広重は天才だと、赤瀬川氏は絶賛する。
例えば、「目の前にいきなり“どん”と何かを持ってきて、はっと起き上がった目を、一気にぐーっと地平線にまで引っ張っていく」。
ゴッホが模写したことで知られる「名所江戸百景」の「亀戸梅屋舗」は、見ている者の鼻がぶつかりそうな超近景に黒々とした梅の枝を描いて、枝越しに遠景の梅見客を配している。構図が大胆な半面、枝先の梅の花はひとつひとつ違う方向を向いているというきめ細かさもある。