目からウロコの浮世絵の楽しみ方
(世界文化社 2400円)
「EDO―100 フカヨミ!広重『名所江戸百景』」堀口茉純著
「大はしあたけの夕立」は、夕立の中、隅田川にかかる大橋を足早に渡る人々を描いている。この絵には当初、川岸に立ち並ぶ蔵の光る白壁と、2艘の小舟が描かれていたのだが、次の版では削られた。実はこの光る白壁は幕府の御用船格納庫である御船蔵だった。このあたりは安政の大風害で大きな被害を受けた地域で、御船蔵を描き入れると復興の遅れに対する風刺と思われる。そこであわててこれらを消したというわけだ。広重作品の裏事情を読み解いてくれる一冊。
(小学館 1500円)
「遊べる浮世絵」藤澤紫著
幕府の締め付けが厳しい中、浮世絵は報道の手段としても用いられた。歌川国芳の「源頼光公館土蜘作妖怪図」は、将棋に興じる頼光の背後に土蜘などの妖怪がひしめいている。頼光は実は将軍家慶で、妖怪は苦しむ庶民を暗示しているといわれ、天保の改革を風刺していると評判になった。また、鞘絵という遊び心のある浮世絵もある。円形に歪んだ絵の中心に刀の鞘のようなものを置くと、ちゃんとした絵が鞘に映る。この一冊で江戸の文化が見えてくる。(東京書籍 1900円)