「首都水没」土屋信行氏
「この夏、各地で集中豪雨による被害が発生しましたが、それでも、ほとんどの人は、東京に洪水が来るとは思っていません。地震については、いつか来るぞとみんなが言い、防災グッズも地震を想定しています。ところが、整備された都会は洪水とは無縁だと思いがちです。東京がいかに水に弱いのかを伝えたくて、この本を書きました」
東京の下町は、そもそも海抜が低い。著者が江戸川区のハザードマップを作ったとき、小中学校の指定避難場所は80%が水没することがわかった。そこで区内のマンションや高い建物に逃げさせてもらう計算をした。
「すると、区民68万人のうち37万人分しか避難場所が存在しなかったんです。逃げるためのハザードマップなのに、江戸川区の場合、逃げる場所はないという地図になってしまいました。台風が来るとわかったら、区外の高台にお友達がいる人は、広域避難してください、ここに避難してもだめですよ、と区内の学校を巡回して住民に訴えました」
昭和30年代初めまで、下町のゼロメートル地帯はたびたび洪水に遭った。家には舟が常備してあり、盛り土をした高台の小屋に米、味噌、醤油を保管し、水が引くまでそこで過ごした。位牌にはヒモと滑車がついていて、天井裏に吊り上げられる工夫もされていた。