「誰がタブーをつくるのか?」永江朗氏
「日本は自由の国だ」と、多くの人が思っている。北朝鮮などの報道を見るたびに、報道や言論の自由がないなんてひどい国だと同情することだろう。
「確かに、日本は自由な国です。しかし、その自由は“そこそこ”のもので、意外とタブーが多いことは見落とされがちです。例えば、東日本大震災後しばらくは、2020年の東京オリンピック招致に対して冷ややかな反応を示す人は多かった。ところが開催が決定するやお祭り騒ぎとなって、反対の声は上げにくくなりました。“なんとなく”や“雰囲気”によって、言ってはいけない状況になることが日本にもたくさんあるんです」
本書では、報道やビジネス、わいせつなどのさまざまなタブーを明らかにしながら、それらと付き合っていく方法について考えていく。例えば、いまだ収束を見ない福島第1原発事故。あの地震が起きるまでは、原発が“危険”という報道はほとんどなかった。
「これは、東京電力が雑誌などに大金を払って広告を出していた“お客さま”だったことで、批判記事が書かれにくかったためです。また、一般の国民の間にも、危機感はあまりなかったはずです。日本人は言霊の存在を信じていて、“爆発するかも”“死ぬかも”などというマイナスの言葉を言うと現実になるのではと考え、なるべく言わない、考えないようにする傾向がある。これも、タブーが生み出される要因のひとつかもしれません」