「首都水没」土屋信行氏
「洪水が来ると理解して、水とともに暮らす術を身につけていたんですね。そういう知恵が途絶えてしまいました。蛇手川、堀之内、堀切など危険情報を刻み込んだ地名も、忘れられていきました」
一方、山の手の台地も危険になってきた。道路が舗装され宅地化が進み、土がコンクリートで覆われ、ゲリラ豪雨が降ると下水道から水があふれるからだ。では、どうしたらいいのだろうか。
「行政はハード面で地下道や堤防の整備を進めます。みなさんは、ソフト面で自分の命を守る術を身につけていただきたい。発泡スチロールを枕カバーに入れたもの、空のペットボトルを防災用品に加えれば、浮輪になります。着衣泳も大事です。近所の人と知り合って、いざという時に助け合える地域力をつくっていく。そうやって楽しい東京にしていきましょう」
(文藝春秋 760円)
▽1975年、東京都入都。環状7号、8号線の設計・建設をはじめ、道路、橋梁、下水道、まちづくり、河川事業に従事してきた。現在、土木学会首都圏低平地災害防災検討会座長。ものつくり大学非常勤講師。