「美貌帖」金子國義著
画家・金子國義の部屋は、時間をかけて集めたコレクションであふれている。和洋を問わないアートの数々、雑誌や写真、骨董、鏡、水晶の玉、貝殻の標本……。画家の審美眼にかなった愛しきものたちが空間を埋めている。
自分の部屋を好みの絵で飾るために、絵を描き始めたのだという。涼しげでエロチックな美少女たち、バレエダンサーのような肉体を持つ美青年たち。本当に好きなもの、自分が陶酔できるものしか描けない、と言い切る画家が、その美意識の豊かな源にさかのぼり、半生をつづった自伝。たくさんの挿入写真からも、流れのままに才能を開花させていったこの人の軌跡が見える。
1936年、埼玉県蕨市生まれ。織物工場を営む裕福な生家で、美しいものに囲まれて育った。着物、歌舞伎、絵画、映画、バレエ、音楽、料理。さまざまな土壌から養分を得て多様な才能を見せるが、画家への道はまだ見えていない。18歳から5年間、歌舞伎の舞台美術家、長坂元弘に師事。芸術家の天分に磨きをかけた。遊び好きでパーティー好き。類は友を呼ぶのか、多くの出会いがあった。