「竹鶴政孝とウイスキー」土屋守著
放映中のNHK朝の連続ドラマ「マッサン」は、国産ウイスキーの基礎を築いた男の一代記。ドラマの主人公の名は亀山政春、スコットランド人の妻はエリーだが、モデルとなった人物の実名は竹鶴政孝とリタ。
竹鶴は明治27年、広島県竹原町の造り酒屋の三男に生まれた。大阪高等工業学校醸造科を卒業後、当時の洋酒業界を牽引していた摂津酒造に入社。社長の阿部喜兵衛に背中を押されて、本場のウイスキーの製造法を学ぶために、単身スコットランドに渡る。体当たりで蒸留所の門をたたき、スコッチウイスキーの製法を実習。その克明な記録が「竹鶴ノート」として残っている。
著者は英国在住が長く、ウイスキーライターとして知られている。竹鶴ノートを読み解き、丁寧な注釈をつけて、ほとんどそのまま掲載している。人物伝より、こちらのボリュームが大きいのだが、ウイスキー好きにはまたとない参考資料。原料や製造方法はもちろん、労働者の待遇問題や販売方法にまで言及している。スコッチに引けをとらない「日本のウイスキーをつくる」という竹鶴の「本気」がひしひしと伝わってくる。