「反国家のちから」鎌田慧著
2014年5月、福井地裁が〈大飯原発差し止め判決〉を出した。判決のとき、被告席にも傍聴席にも関西電力関係者の姿はなかった。著者はその事実に、政府がバックについているという傲慢さを見た。これは福島の事故以来、初めての原発裁判の判決で、それまではほとんど原告側の敗訴で終わっていたが、樋口裁判長は福島原発事故を踏まえて、〈人間のいのちと人間の尊厳を裁判所が守る〉という決意を表明したのだ。ちなみに、この裁判長は今年4月、高浜原発の再稼働差し止めの仮処分決定を出している。
反骨の著者による、戦争、原子力、死刑、ハンセン病のルポルタージュの集大成。
(七つ森書館 1800円+税)