「オオカミがいないと、なぜウサギが滅びるのか」山田健著
地球上の生き物は、もともと食物連鎖による三角形の生態系ピラミッド構造内に存在している。一番上に少数の肉食動物がいて、その下には雑食動物、さらにその下に植食動物、またその下には植物、そのさらに下にはすべての基盤となる土壌という図式だ。しかし何らかの理由で頂点の肉食動物が消えた場合、生態系に何が起こるのか。本書のタイトルは、そこで引き起こされる自然環境の異変を示す。
人間によってオオカミが消えた日本では、鹿の大繁殖が起こった。結果、草木は食べ尽くされ、草木に依存する虫やその地をすみかとするウサギは次々姿を消した。虫を捕食する鳥も、鳥を捕食する猛禽類も激減。草木のない山の斜面は雨で土壌流失を起こし、ピラミッドの基盤である土壌も失われていく。これは異変の一例にすぎず、世界中で危機的状況が起きている。
本書は生態系回復のためのアクションを提案。地球を食いつぶす前にいま人間ができることを考えさせてくれる。(集英社インターナショナル1300円+税)