「砂の王宮」楡周平著

公開日: 更新日:

 昭和22年4月、神戸・三宮の闇市で甘味料に化ける薬剤を売りさばいて大金を稼いでいた塙太吉は、進駐軍相手のブローカーをしていた深町信介と出会う。

 戦後の混乱に乗じ、薬の安価販売で大儲けしようという深町と組んで莫大な利益を挙げた後、アメリカにあったスーパーマーケット商法を日本でも定着させ、面白いように次々と商売を成功させていく。しかし、東京1号店を出すために紹介された男との出会いによって、思いがけぬ事件に巻き込まれ、絶体絶命の危機に陥ってしまう……。

 本書は、自らの才覚で戦後の闇市から日本一のスーパーを立ち上げ、流通王となった男の栄枯盛衰を描いた経済小説。戦後の焼け跡から流通王にのし上がるまでの若き日々を描いた第1部と、後継者育成に悩む晩年の塙が過去から思わぬ逆襲を受ける第2部の2部構成。

 大企業が資本力を武器に業界を席巻した戦後から、古いビジネスモデルの終焉と新たなビジネスの萌芽へと続く流通史にもなっている。(集英社 1700円+税)



【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭