「作家で十年いきのびる方法」鯨統一郎著
主人公は、苦節17年でプロ作家となった伊留香総一郎。やっと作家になれたと安堵した直後、以前勤めていた会社の上司から「10年後も作家でいられるのか」と聞かれ、急に不安にかられる。まだ作家業は収入源にはならず本業の保険会社の代理店の仕事を辞めるわけにもいかない。少ない時間をやりくりし、妻に励まされながら執筆に励む日々。小説の書き方のマニュアル本を読み、好きな作品の構造を分析し、慣れない業界のパーティーに顔を出し、売り上げランキングや読者からの評判に一喜一憂しつつ、一年一年を重ねていく。作家であり続けることを目標として奮闘する伊留香は作家としていきのびることができるのか……。
本書は、自身をモデルとして作家デビュー前を描いた小説「努力しないで作家になる方法」に続く、自伝的小説第2弾。毎年多くの新しい作家がデビューしながら、その中の一握りしか残らないという業界の中で生き残るための試行錯誤を赤裸々に描いている。(光文社 1500円+税)