2キロの重みは“ダテ”じゃない
暗い室内の動くダンサーという悪条件のためか、全編「砂目調」のノイズが乗る。そして約9割の写真が「ブレ」ている。また何点かはそこに「ボケ」が加わり、輪郭も曖昧になる。抽象絵画の様相。これらもまた意図的な表現だ。昔ながらのフィルム撮影による「ドキュメンタリー映画」へのオマージュなのかもしれない。
さて、このデジタル全盛の時代にわざわざ分厚い「本」にする意味とは? と考え、行き着いたのが「スポーツとしての読書」だ。本の厚み=時間の地層。写真家が通過した時間を追体験するには、五感を研ぎ澄ませつつ「2キロの紙の塊」をめくりゆく「身体運動」が必要だ。ノンビリ寝転んではいられない。しかるべき姿勢を保ちつつ、全ページを「踏破」すること。本書の存在意義はこのあたりにありと睨むのだが、いかがだろう?(Steidl 9800円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。90年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなどを幅広く手掛ける。