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宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

2キロの重みは“ダテ”じゃない

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 暗い室内の動くダンサーという悪条件のためか、全編「砂目調」のノイズが乗る。そして約9割の写真が「ブレ」ている。また何点かはそこに「ボケ」が加わり、輪郭も曖昧になる。抽象絵画の様相。これらもまた意図的な表現だ。昔ながらのフィルム撮影による「ドキュメンタリー映画」へのオマージュなのかもしれない。

 さて、このデジタル全盛の時代にわざわざ分厚い「本」にする意味とは? と考え、行き着いたのが「スポーツとしての読書」だ。本の厚み=時間の地層。写真家が通過した時間を追体験するには、五感を研ぎ澄ませつつ「2キロの紙の塊」をめくりゆく「身体運動」が必要だ。ノンビリ寝転んではいられない。しかるべき姿勢を保ちつつ、全ページを「踏破」すること。本書の存在意義はこのあたりにありと睨むのだが、いかがだろう?(Steidl 9800円+税)

▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。90年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなどを幅広く手掛ける。

【連載】見た目で買った面白読本

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