アツイ芸術をクールにまとめる“技”
「捕われた声は静寂の夢を見る」小泉明郎著
漆黒のクールビューティー。端正な縦長フォルムに惹かれ思わず手に取る。
小泉明郎。1976年、前橋生まれ。映像、パフォーマンスを中心に作品を発表。本書は本年3月21日より「アーツ前橋」にて開催された展覧会の公式カタログ。B5変型。並製。PUR製本。奥付にはこれら「造本の仕様」に加え、今どきのはやりか、フォント(書体)名までも明かされている。本明朝、ゴシックMB101、Helvetica Neue LT、DIN Next Slabの4書体。そしてマニアック過ぎるとも思えるこの種の「手の内明かし」はダテではない。その真意は? 本書の立ち位置を含め眺めてみよう。
Q&A形式の短いインタビューに答えながら「芸術/映像観」をアーティストが語る。「……(映像は)イメージを介して感性に訴え、情動を操作的に揺れ動かすことが得意……」「……パーソナルに掘り下げたものにしか、パブリックにするだけの価値はない……」「(他者を映像に取り入れることで)作品が、人間についてより普遍的に物語るようになった……」。つまり芸術とは、他人を「私事」に巻き込みながら真実を手探り、見る者の気持ちを揺さぶる行為である、と。