目眩すら覚えるホログラム・デザイン
「傍流革命」松崎正年著
コニカミノルタ取締役会議長による経営論。
「写真/レンズ/フィルム/光学/複写機/レーザー」と、筆者の歩んだ歴史と本書の装丁を読み解く上で重要な単語が随所に並ぶ。
四六判、上製。カバーは4色印刷にコート加工。全面、訳ありの黒ベタ、そこに白抜きの大きなタイトル。一見、シンプルなデザイン。だが実際手に取れば、コトの異様さに気付くだろう。「レンズのような不思議なパターン」がカバー全体を埋め尽くす。目の焦点は、カバー表面に合っているのだが、奥から手前に向かって光の柱が3D映画のように突き出してくるため、距離感が怪しくなる。少し傾けるだけで柱が踊り出し「目眩」すら覚える。
「ホログラム」。語源はギリシャ語。全て(ホロ)を記述する(グラム)。怪しげな言葉の響きとは裏腹に、物理学に根ざした確固たる光学技術(ホログラフイー)の成果。光の色や強弱に加え「方向」を記録することで、奥行きある3次元画像の再生が可能。通常、制作過程でレーザー光を使用。本書に見る「レインボーホログラム」は、装飾性が高くデザイン素材として用いられる他、偽造防止のため、クレジットカード、紙幣などで使われている。ちなみに、ホログラフィーの技術は、光学以外の諸分野に応用され、刺激的なキー概念となっていて興味深い。例えば、「部分から全体」の復元が可能(!)な「冗長性」と、3次元情報を瞬時に読み出せる「並列性」により、次世代のメモリー技術として注目を集めている。