虹色の向こうに「移ろい」が見える
「バス停に立ち宇宙船を待つ」友部正人著
友部正人。1950年生まれ。ミュージシャン/詩人。帯に「5年ぶりの新詩集」「ニューヨークの部屋で……時差ぼけの頭で思いつくままに……三年ぐらいの季節ごとの詩を書いてみた」とある。
目次を繰れば「遠いアメリカ」「ハロウィンの夜に」「メイド・イン・USA」と、アメリカへの思いがそこはかとなく漂う。ただ、詩人がいう「季節」は、俳句のように必ずしも字面には表れず、読者の想像力に委ねられる。その一方、「時の移ろい」を静かに感じさせる大切な仕掛けが本書には施されている。
B6変型。黄金比を感じさせる縦長の比率。カバーは、クラフト紙風、茶色の「ブンペル」。印刷インキは不透明ホワイト+蛍光ピンク+スミ。紙と紙の間に絵の具を挟み、はがしたときに偶然できる絵柄を楽しむ「デカルコマニー」。その一部分を切り抜いた挿画とゴシック体によるタイトル文字、とシンプルな構成だ。
さて、本文用紙に着目。折(16ページ)ごとに色が変わる。ピンク→オレンジ→黄→黄緑→水色→ベージュ→グレーと、淡い虹色様のグラデーションになっている。版元・ナナロク社の担当編集の方に伺ったところ、それぞれ銘柄も変えてあるとのこと。Aプラン[ローズホワイト]→OKミルクリーム[ロゼ]→OKソフトクリーム[バニラ]→ラフクリーム琥珀→Aプラン[スカイホワイト]→いしかりN→OKアドニスラフ[W]。滑らかな虹色を浮かび上がらせる、用紙選びのセンスに加え低廉な「本文用の紙」を織り交ぜるなど、予算への目配りも怠りない。そして、紙色の緩やかな遷移が先述の「季節」を演出する趣向。