「吉原という異界」塩見鮮一郎著
資料を読み解きながら江戸の遊郭・吉原の変遷をたどる歴史エッセー。
家康によって江戸城の普請が始まると、遊女を置く「傾城屋」が麹町8丁目や鎌倉河岸、京橋角町などの繁華な町に出現。やがて京橋の傾城町が現在の人形町にあたる「よし原町」と呼ばれる場所に移転した(元吉原)。やがて江戸が活気づいてくると、各町の楼主たちは、大坂の新町や京都六条の三筋町のような公認の遊女町をつくることを要望するが、家康は認めない。家康が死んだ翌年の元和3(1617)年、吉原は公認され、ここ以外での売春は禁止される。吉原開基の通説の元になっている享保時代の「洞房語園」などの誤りを正しながら、その歴史の裏側を克明に描き出す。
(河出書房新社 840円+税)