「虚栄」久坂部羊著
201×年、急速に悪化する悪性度の高いがんで死亡する著名人が続出したことを契機に、がん治療に対する関心が高まり、最適化治療を決める重要政策会議「プロジェクトG4」が発足した。G4とは4つの治療法である、手術、抗がん剤、放射線治療、免疫療法の4つを指し、それぞれが一致協力してがんの撲滅を目指すことがこのプロジェクトの目的だった。
しかしそれは、ロボットによるがん手術の普及を目指す阪都大学、分子標的薬などの抗がん剤治験のネットワーク化を目指す東帝大学、ピンポイント照射による放射線治療の有効性を訴える京御大学、米国から導入した副作用のない免疫療法を推す慶陵大学の研究者たちによる覇権争いと化す。果たしてプロジェクトの行方は……。
本書は、がん治療をめぐる医療業界を描いた医療小説。最新治療だけを追いかけ良い面にしか光を当てないマスコミ、製薬業界や政治家との駆け引きなど、医療界に蠢く人間模様をリアルに描いている。(KADOKAWA 1700円+税)