「愛の顚末」梯久美子著
「蟹工船」を書いて警察に虐殺された小林多喜二の恋人、田口タキは、生涯、沈黙を貫いて2009年に死んだ。タキは父親が事業に失敗したため14歳で銘酒屋に売られ、酌婦をしていた。多喜二はまだ肉体関係もなかったのに借金までしてタキを助け出し、自宅に引き取った。だが、家族の生活を背負っていたタキは、迷惑をかけまいと多喜二の家を出て自活を目指した。一度は東京で多喜二と同棲したが、多喜二が収監されたとき、彼の仲間と比べて自分が学のないことを思い、求婚を断って身を引いたのだった。(「小林多喜二 恋と闘争」)
ほかに梶井基次郎、三浦綾子ら12人の文学者の愛の物語を描くノンフィクション。
(文藝春秋 1450円+税)