「昭和と日本人 失敗の本質」半藤一利著
著者の初期の作品を編んだ歴史エッセー集。日本が戦争に突き進んでいってしまった理由をさまざまな視点から探る。
まずは新聞が、昭和6(1931)年の満州事変から国際連盟脱退までの2年間、その職分を忘れ、陸軍に歩調を合わせ、世論をミスリードした経緯を検証。唯一、「時事新報」の主筆・伊藤正徳だけは社説で国際連盟の脱退反対を主張し続けたが、その他の全社が一丸となって連盟脱退の方向へ世論を導いたと言論の持つ重さと、新聞報道に踊らされた日本人の持つ「精神の病」を問う。
その他、平和主義者のイメージが濃い吉田茂の外交官時代の素顔や、開戦の詔書にあるべきはずの一行を削除した当時の指導者の意図など。「歴史探偵」の面目躍如の歴史読み物。(KADOKAWA 640円+税)