「食文化」をおいしく味わう本特集
「アメリカは食べる。」東理夫著
日系2世の両親をもつ著者が、アメリカの食文化の根源をたどったトラベルエッセー。「特徴がない・まずい・大ざっぱ」な印象のアメリカ料理だが、この本を読むと、移民大国アメリカの「心の豊かさ」が見えてくる。故郷を離れた開拓民の思いだけでない。食に押しつけられてきた固定観念や権威をそぎ落とす自由こそ、アメリカ食文化の醍醐味だと説いている。時折、著者の母親が作った料理を懐古するくだりは心を掴まれる。グレービーソース、ダンプリング、チキンキャッチャトリー……その本流を探す旅に同行した気分にも。登場する料理の品数が膨大で、どれも実にうまそうだ。アメリカ料理がまずいとはもう言わせない迫力も伝わる。(作品社 3800円+税)