明治維新の真相に迫る本特集
「歴史は勝者によってつくられる」とはよく言われることで、教科書が教える歴史の常識がまったく史実と異なる場合も多い。明治維新に関する記述もしかり。そこで、新たな視点で明治維新の真相に迫る目からウロコの面白歴史本を紹介する。
歴史に「イフ」はないとはよく言われることだが、もしも坂本龍馬が暗殺されずに生きていたならば……日本人なら一度は考えたことがあるはず。
「暗殺の近現代史」(洋泉社編集部編著、1600円+税)は、幕末以降に起きたさまざまな暗殺事件にスポットライトを当て、歴史の常識を覆しながら、事件の闇を暴く歴史読み物だ。
まずは作家の井沢元彦氏が近代史の謎とされていた「孝明天皇の暗殺疑惑」を読み解く。孝明天皇暗殺説が多くの賛同者を得てきたのには、あまりにも急進的な行動で孝明天皇に忌み嫌われ、京都から追放された長州藩が、その死によって復権し、歴史が激変したことが背景にある。
暗殺論者の説では、首謀者の岩倉具視が側室だった妹の紀子を操り、天皇に毒を盛ったとなっている。しかし、井沢氏は孝明天皇の死は、暗殺ではなく天然痘ウイルスを用いた「傷害致死」だったと断じ、その根拠を語りながら、実行犯の名まで挙げる。さらに、その後の「明治天皇すり替え論」の真偽についても言及する。
一方、作家の加治将一氏は、冒頭でも触れた坂本龍馬の暗殺事件の真相に大胆な推理で迫る。そもそも龍馬を殺したのは誰なのか。新選組や京都見廻組など、さまざまな説が出ているが、彼らにとってお尋ね者の龍馬を討ち取ったなら、すぐさま名乗りを上げないはずがないと新選組・京都見廻組犯行説を否定。その上で現場の状況を改めて解説しながら断定される意外な犯人の名前には、驚きながらも納得させられる。
その他、伊藤博文が殺された「ハルビン事件」や、昭和最大のクーデター、二・二六事件など、教科書では決して知ることができない歴史の深層を掘り起こす。